大判例

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広島高等裁判所 平成10年(う)151号 判決

原判決は,甲野の最終処分場における検証において,被告人会社らが使用するダンプカー運転手や甲野の現場作業員らが投棄場所として指示説明した場所付近から採取された物につき,鑑定の結果,基礎汚泥であることが判明したことに関して,これが自白の信用性を担保する客観的事実を立証する証拠といえるかどうかは,採取された物が,正に被告人会社が本件期間中に処分委託のために搬入したものといえて初めて可能になるが,前記採取された物は,被告人会社以外の業者が搬入したか,被告人会社が本件期間以外に搬入した可能性がないとはいえず,この点に関する証拠である検証調書及び鑑定結果書が,本件期間中に被告人会社が甲野に汚泥の最終処分を委託したことを客観的に裏付けるものであるとはいえず,被告人の捜査段階の自白は,その信用性を肯定するに足りるほど,客観的な事実関係に符合するところがあるとはいえないとし,さらに,仮に前記自白が信用できるとしても,これを補強する証拠が足りないというべきであると判示して,被告人の自白の信用性を否定するとともに,自白には補強証拠がないという判示をしていると認められる。

しかしながら,確かに,自白の信用を判断するに当たり,客観的な証拠と合致し,それが自白を裏付けているかどうかは,自白の信用性を判断するに当たっての重要な一要素であるところ,自白の信用性を肯定するためには,それが罪体を直接に立証するような客観的な証拠によって裏付けられることまでは必要でなく,自白の経緯や供述経過,自白した状況,自白の内容,秘密の暴露があるかどうか,虚偽の自白をするに至ったという弁解の合理性などをも総合し,信用性を担保するだけの客観的な証拠や事実関係と合致していれば足りると解すべきである。したがって,前記の採取された物が,正に被告人会社が本件期間中に処分委託のために搬入投棄したものといえて初めて自白を担保する客観的証拠となるという原判決の判示は,自白の信用性を担保するために,罪体を直接立証する証拠を要求するものであると解せざるを得ず,この判断は首肯することはできない。

そして,被告人の自白は,前記のとおり,被告人の供述の経過,自白に至る経緯等からみて,十分信用性が窺われること,被告人会社及びその関連会社の乙山が,本件期間中にも多量の基礎汚泥を工事現場等の排出源業者から収集し,中間処理していること,甲野の最終処分場における検証において,被告人会社らが使用するダンプカー運転手や甲野の現場作業員らの指示説明により,基礎汚泥が発見されたこと,平成5年10月8日以降,被告人会社による甲野の最終処分場への廃棄物の搬入量が激減し,被告人会社らの環境保全公社の最終処分場への汚泥の搬入量が激増していること,被告人会社及び乙山が本件期間中に搬出した汚泥の推計重量は,環境保全公社の最終処分場に搬入していた汚泥の重量をかなり上回り,他方,被告人会社及び乙山が本件期間中に搬出し得る浚渫土砂等の重量は,被告人会社が甲野の最終処分場に搬入した廃棄物の量をかなり下回るものであること等の事実関係は被告人の自白と合致し,この自白を客観的に裏付けるものであり,さらに,自白の内容は,不自然,不合理なところはなく,客観的な事実とくい違ったり,矛盾したりする点は何ら認められないなど,自白の内容面からもその信用性を窺うことができること,前記自白と相反する被告人の原審及び当審公判廷における供述が不自然で,信用することができないこと等を総合すれば,被告人の自白の信用性を認めることができるといわなければならない。原判決の判断は是認できない。

また,自白の補強証拠については,自白にかかる事実の真実性を保障し得る程度のものであれば足り,それが直接証拠であると間接証拠であるとは問わないものであると解すべきであるから,原判決が,補強証拠が罪体を直接立証するものである必要があると解しているとすれば,その解釈は是認することはできない。そして,本件において,前記二の事実やその事実を認定する証拠及び上記の自白を裏付ける前記四の客観的な事実関係やそれを認定する証拠が認められるから,自白を補強する証拠が足りないということはできない。原判決の判断は是認できない。

前述したとおり,本件の公訴事実の直接証拠である捜査段階における被告人の自白は,十分信用することができ,さらに,被告人の自白を裏付けるそれぞれの客観的な証拠や事実関係は,直接公訴事実を証明するものではないが,犯罪事実を推認させる情況証拠となるから,信用性を肯定することができる被告人の自白と前記各情況証拠を総合すれば,被告人会社が,本件期間中に,汚泥を本件最終処分場に搬入して,処分委託をしたという公訴事実を合理的な疑いを容れない程度に認定することができるといわなければならない。

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